雑誌O.toneオトンVol.85(2015年11月発売)にチカホブックマルシェ代表として掲載していただきました。
「チカホブックマルシェ」の活動について色々とお話しさせていただきました
札幌駅前通地下歩行空間の一角、行き交う人が立ち寄り夢中になって好みの一冊を探している。
札幌市内の古書店など6~7店が軒を連ねる、チカホブックマルシェだ。
絵本や美術図録が並ぶ『ばれろん堂』のブースに、発起人である種田淳之介さんの姿があった。
チカホブックマルシェは2013年にスタート。
それまでは地下歩行空間に店ごとで各々出店していたが、規模が小さく品揃えに偏りがあった。
そこで種田さんが札幌市内の古本屋に呼びかけ、一つのイベントとして月に1回以上のペースで開催することに。
幅広い層に興味を持ってもらえるように、本以外に雑貨やレコードなども扱う。
「こんなこと言うと怒られるかもしれないんですけど、文学にはあまり詳しくなくて。」典型的な理系だという種田さんが本に興味を持ったのは、ビジネスとしてだ。
ある日、人気作家の最新刊をチェーン店の古本屋へ持ち込んだ時のこと。査定額はなんと100円台。手続きをしていると、別の客が「この本がほしい」と店員に声をかけた。
種田さんが持ち込んだ本は目の前で買取額の10倍近い値段で売られた。
「その差額は何なのか疑問に思いました」と振り返る。
その出来事がきっかけで古本の流通に興味を持ち、2008年に『ばれろん堂』を設立。主にインターネット販売を行う無店舗型の業務体系だ。
店の特性上、客と話す機会は少ない。
だが、チカホブックマルシェを始めてからは、対面販売の良さに目覚めた。
「何気ない対話の中で信頼関係が生まれて、また次も買いに来てくれるのが、純粋に嬉しい。」
旅行が趣味で、これまでに30ヵ国以上訪れた種田さん。
長い移動時間のお供はもちろん本だ。
持っていく本のコンセプトは”さらりと読めない本”。時間をかけるからこそ、旅先で感じることも多いのだと言う。
「売れるものだけを並べるのは面白くない。かといって売りたい本が売れるとは限らない。古本屋は効率を求める商売ではないんです。でもそこに面白さがありますよね」
今年の12月で2周年を迎えるチカホブックマルシェ。
参加しているのは、古本業界では若手と呼ばれるキャリア10年未満の経営者がほとんどだ。
「世間では斜陽というイメージがありますが、本屋はまだまだ元気だということを伝えたい。」情熱を胸に抱き、挑戦は続く。